父がかんしゃくを起こす日

決して長くはない昼休み。ここ1年くらいはこの休憩時間に自宅に帰り、94歳の祖母とともに昼食をとることを日課にしている。
あ、このときついでに父の様子もうかがうことにしている。昼食を一緒にとるわけではない。少々のことでは折れない高いプライドと、高次脳に機能障害を併せ持つ父は、どうも私や母と同じ時間帯に食事をすることを好まないのだ。
一緒になにかすると、自分一人だけがお遅れをとっていることが分かったり、段取りのまずさがばれたりと、プライドがへし折れてしまいそうだからでないかと推察している。我が家の簡単な農作業にしても同様だ。決して同じ作業を一緒にしようとはしないのだ。
そんな父なので、いつものように好きな時間に食べればいいじゃないかと自分と祖母の食事だけ準備して父はそっちのけで食事を済ませて出かけようとしていたのだった。
あくまでも昼休みなので決して悠長にはしていられない。食事を終え、食器を片付け、口をすすいで出かけようと玄関に出たところで父に呼び止められた。
どうやら、彼がこれからしようとしている(少々高いところの作業、間違いなく危険が伴う)作業にはどうしてもトラクターが必要なんだと必死で訴えてきた。
出勤前だし、あまり長々とかまっていては欠勤になってしまうので、あわてて職場に「すみません小一時間遅れます」と電話連絡をし、改めて腰を据えて聴いてやることにした。
父の理屈では、「ちょっとくらいなら大丈夫だからとにかく鍵を渡せ自分にだってできるんだから信用してくれ」ということのみ。それが聞き入れられないとすぐさまかんしゃくだ。
こんなに頻繁にかんしゃくを起こして訳の分からない言葉で怒鳴り散らすようなオッサンには免許も何も渡せない。
こちらもつきあって押し問答するのに疲れてしまった。
最終的には父に観念してもらったのだが、昼休み30分間でわがままなオッサンの気が済むのなら安いもの。