餅つき器が行方不明

母が餅つき器の行方を捜している。そんなに広い家ではないのに。
年間数回、十数年来使っている機械だし、一抱えはある大きさなので、目につかなくなるはずはない。高次脳機能に障害を持つ失語症の父がむやみやたらと片付けてしまったに違いない。しかしどこへ隠したのやら。本人は泣きそうな顔で「わしゃしらん」とアピールはしているが、まず間違いなく彼の仕業だ。
脳梗塞(こうそく)の後遺症とはいえ、まだらぼけの状態で進行が止まっているようなものなんだからそれなりに対応しないとこちらの日常が立ちゆかなくなる。母はどうしてもそれまで健常であったときの気分で相談したり質問したりしているけれど、端で父の様子を見ているととても正常な判断に基づいて答えているようには見えない。長く同伴しているとそのあたりを割り引いて見ることが出来なくなるのだろうか。