SFの古典的名作と、一昨年のホラー小説大賞作品を併読していた。ようやく読了。

夏への扉 (ハヤカワ文庫 SF (345))

夏への扉 (ハヤカワ文庫 SF (345))

夏への扉は実に今から50年前に、そこから20年後の未来である1970年をベースにその30年後である2000年の世界を描いた作品。いまは2009年。この小説が描いた2000年はとうに過ぎ去ってしまったのだが、科学考証的な突っ込みどころはさておき、作者の想像力には感心。
アメリカは契約社会であり訴訟社会であると言われるが、そのことは50年前であっても現代社会であってもほぼ変わらぬわけで、本作品においても、何年間コールドスリープで眠り続けようが、その会社が倒産して次なる経営者に引き継がれようが、そのことも含めてきちんきちんと履行されていくだろうことだけは疑いもなく、実際小説上もきちんと描かれているのに改めて感心してしまった。
この感覚は、アメリカに住んでいる人にとっては至極当たり前なんだけれども、日本に住んで約40年、物心ついて22年が経った私にとって、そうした描写にだけは違和感を覚えずにおれない。これはアメリカ初の物語に触れる私が常に感じてしまうどうしようもない壁なのである。
鼻 (角川ホラー文庫)

鼻 (角川ホラー文庫)

各種書評にもあったが、往年の筒井康隆作品からどたばたを引いたような作品。