初めてのツーリング

ゴールデンウィーク学生寮は閑散としており、入学して日の浅い新入生たちは実家に帰ったりしているし、先輩たちもなんやらかんやらと不在の部屋が多いし、ただでさえ薄汚れて汚く暗い寮の中はいっそう寂しく感じられるのだった。
そうはいっても、まだまだ寮の周囲に探検する個所はいくらでもある。実家から届いたホンダのスカイを駆って、連日気の向くままに一人走り回っていた。
だいたい、ゴールデンウィークに寮に残っている輩になにか特別に予定があるはずもなく、そんな暇人たちに向けて先輩たちの何人かが「ツーリングにいくぞ」と声をかけてくれた。未だたいした面識もない学生同士ではあったが、そんな誘いがうれしくて、ほいほいオンボロスクーターにまたがって、皆の後に続いて南の海を目指したのだった。参加者は6〜7人、全員50CCの原付バイクだったな。ヤマハのDT50、ホンダのMTX、スーパーカブ、あとはスクーターばかり。それまで引っ込み思案であったのだが、ものすごく天気がよい日で、これから何でも自力でできるんだという気分がこのツーリングで確信できたような気がした。ある意味、ひとつの転機だったのかもしれない。これからはとにかくどんな誘いでも断らないことにしようと決めた。特に宣言したわけではないが、とにかく行動指針としてこれ以降そのように振る舞うようになった。
帰り際に、私のオンボロスクーターは焼き付き気味。同行諸氏に迷惑をかけたに違いない。