雨、この制御不可能なもの

所属している団体で予定していた屋外作業は順延。
地元小学校の運動会は雨中決行(午後からは体育館内での実施となったそうだが)。
おかげさまで午後からの予定がフリーとなった。
明日からは修羅場となること必至である職務上の仕事に着手しようかとちらっと思いはしたが、思っただけでやめ。本来休日である今日できることは今日するのだ!
というわけで、かねてから積ん読状態であった本の山に手をかけた。
あまりにも久しぶりに積ん読の山を崩してみると、沢木耕太郎著「一号線を北上せよ」が出てきた。

一号線を北上せよ

一号線を北上せよ

沢木作品といえば「深夜特急」が思い出される。
十数年前に学生であったころ、骨折*1して入院を余儀なくされていた僕に、先輩が差し入れてくれたのがこの深夜特急1・2便だった。
左足をギプスで固定され、入院費にも事欠き支払いが心細く、はじめて使う松葉づえ、入院先の鬼のよう(に見える、救急病院だしきっと不規則な勤務シフトで旦那とはすれ違いの生活、一粒種の娘はぐれちゃって中絶騒ぎを起こしたりするけど、もうそんなことは問題じゃなく勤務中は毅然とした態度を取り続ける、患者に対しては異常に強気)な看護婦、そんな限定的な環境下で出来ることと言えば本を読むことくらい。
おかげさまで入院二日目で2冊を読了。たった4〜5日の入院中にこの2冊を3度ずつ読んだのだ。
深夜特急〈第一便〉黄金宮殿

深夜特急〈第一便〉黄金宮殿

深夜特急〈第二便〉ペルシャの風

深夜特急〈第二便〉ペルシャの風

この本を届けてくれた先輩は、東南アジアを中心に放浪をしては我ら後輩を集めてはお説教しつつたびのエピソードを語ってくれた。本当にあこがれたし、いまだにあこがれの気持ちは続いてる。結局実現はしてないけど。
もちろん、第2集出版後、かなりの時を経て編まれた第3便も入手したし、読んでいる。(でも、1・2集とは温度が違うような気がする。)
深夜特急〈第三便〉飛光よ、飛光よ

深夜特急〈第三便〉飛光よ、飛光よ

今はどうか知らんけど、バックパッカーのバイブルとも言えるこの沢木作品。この沢木作品が僕の読書歴のスタートと言っても過言ではないだけに、思い入れもすごくある。この本に出会わなかったら、現在我が家にある大量の本のヤマは出来なかった。この作品が、本の向こうにひらけている世界を僕に教えてくれた。(そして現実に対面する力を削いじゃったかも)
自分自身が過去を思い返すときの物差しとしてあるのが沢木作品なのだ。
今回読んだ「一号線を〜」では、「深夜特急」以降、ノンフィクション作家としての立場を確立しつつも「ここではないどこか」を探し続ける作者が、その時点時点で初々しさを失うまいとしながらも、それでも当時のその立場からしか見えない、書けない気持ちや視点が伝わってくる。

*1:原因は原付の飲酒運転による自損事故