父親が帰ってきた。

入院先のリハビリ病院から一時帰宅。外泊許可を取ったらしい。
一命を取り留めた父だが、言語にかなりの問題が残っている。手足の働きは問題ないようで、我が家に帰り着くなり作業用手袋をして育苗ハウス周辺でごそごそと作業を始めてしまった。さらに、田んぼの周囲をうろつきまわり、水廻り(水田の水位を見て回り、水位を上げたり下げたり調整して歩くこと)をしていたそうな。
恐らく自宅でじっとしていても気が滅入るばかりだし、母や祖母と対面していても歯痒いばかりで自分のふがいなさと向き合わなくてはならないことに耐えられないのではないか。農作業(と言っても、今できるのは田植えの後始末くらいだが)をしていれば誰とも話さなくてすむし、自分で好きなようにできるし、楽でよいのだろう。
夕食時には、せっかくかくして置いたはずの焼酎をちゃっかり見つけて晩酌をしていたようだ。おかげでただでさえ話にならぬ状態なのに輪をかけて我が儘になってしまった。母や祖母に対して「バカ」「うるさい、黙っとけ!」「要らぬことを言うな」と当たり散らす。これじゃ、入院前と一緒。
複雑な言葉を失ってしまい、自由自在に使えるのはこの3パターンくらいになってしまっただけにたちが悪い。
彼と付き合っていられる時間が無尽蔵にあったとしても、一日一緒にいるのは辛い。
文字も読めず、もちろん書くこともおぼつかない。絵心はあるのか。どこまで回復するのかしないのか。リハビリテーション次第と言うこと。