高次脳機能に障害を持つ男の合理性

ショックだった。さすがに。
おかしいのか、そうでないのか。
ある意味、彼の持てる能力のすべてを駆使した結果がこれなのだ。

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ここ数年来、父は冬になると今のこたつでうたた寝をするのが常。特にここ数年は、不整脈の影響か、手足のしびれや冷え性に悩まされていたようだ。失語症状を呈するようになった今では彼の口からそのことを聞き出すのは困難であるが、おそらくそうだろう。もしも失語でなかったとしても強がりばかり言う男なので真実を語りはしなかっただろうが。
ここまでは、いつものこと。既に呆れ果ててしまい数年経過しており、当時からいくら寝室で寝ろと言っても聞かないのだ。仕方がない。
昨日、こたつの脇を通ったとき、足裏になんだかへんな感触があった。こたつ布団をめくってみたところ、黄金色の液体が、透明な食品保存用の袋(商品名ジップロックとか、リード冷凍保存バッグ)に入ってタプンタプンしているではないか。
なんだこれ?
取り出して、家族に向かって「なんだ、これ?」と問うたところ、ばつが悪そうな表情の父がなにやら失語症特有のおかしな単語を発しながら取り返しにかかってきた。
ようやくその袋の中身が彼の尿であることに気付いた。ジップロックが尿瓶だよ。とほほ。
肉体的にはむしろ常人よりも健康なはずの父だが、とにかく面倒くさかったとみえる。
変な智恵だけは大昔から長けているのだ。情けなくてならぬ。
糾弾したところ、最初はばつが悪そうだったのが、途中から逆ギレだ。ああ、情けない。