脳機能に障害を持つ男の年末大掃除

脳梗塞(こうそく)の後遺症を持つ男であるわが父、これまで少なくとも物心付いた状態で60回くらいは正月を迎えたと思われる。さすがに60回も年末年始行事を繰り替えしていれば、いやでも段取りは身に付いているってもんだ。今年の年末もお飾りの準備やまつりごとの準備を地味に始めている。
高次脳機能、特に言語野に関わる脳みそが逝っちゃってる父だが、最近その行動にも落ち着きが感じられるようになってきた。
一時は日付や時刻などの数字全般に関する判断はダメなんじゃないかとも言われたが、正月がくることがわかりカレンダーの掛け替えをしようとしお飾りのサイズが小さいことに納得がいかなかったりするなど、随分回復したものだ。一般論的には良い傾向だと言えるのだと思う。単純に、回復していくのはよいことなのだ。
しかし実際の実力以上に、父は自分自身でできることとできたことを過大評価したがっている。「虚勢を張る」という状態。
日常生活の雑事に細々と口を挟みたがり、手を出したがっている。有用性をことさらアピールしてくる。
これまで我が家のずぼらな大掃除になど手も口も出さなかった彼が、今年突如として窓ふきや蛍光灯の掃除やすす払いなどを率先して始めてしまったのだ。始めてくれるのは大いに結構だが、収拾が付けられなくなることがしばしば。
仕方ないんだけど。
父よ、ありがとう。でも、ちょっとそこには手を出さないほうがいいんじゃないかい。