父、愛用の時計

金属製のスライドバックルが破損したという。
父がこれまで使ってきた時計たち5個くらいを持ち出してきて、使えるベルトと交換してくれと迫ってきた。昔の父であれば、こうした部品の修理などはお手の物だったのだが、高次脳に機能障害が出ている今となっては泣きそうな顔で不本意だろうけれども息子の私に「やってくれ」と迫ってくるのだ。正直言ってうれしいはずもなく、かつて達者だった父の姿を思い出すにつけ、ちょっと切なくなるのだ。
だいたい、どこで買ったのかすらわからぬG-shockまがいの安物アウトドアギアっぽい時計に金属製のバックルを無理矢理取り付けている時点で情けない。後生大事に持っている動かぬ時計たち(とうの昔に電池切れになっているセイコーシチズン製品、それを電池交換して使うわけではない)のステンレスバンドをはずして「付け直せ」と迫ってくる。しかもことごとくスライドバックルなのであった。

1980年頃までは腕時計のバックルと言えばこれ!と言われた「スライドバックル」です。
このバックルをみたら”なんだ、あれか!”と思う方も多いですね。それだけ腕時計が薄型モデルに向かっていた1980年代はメジャーなバックルでした。
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<とのこと。新しいものごとへの対応が困難にもなるという失語症患者。父はどうであろうか。バックルの形状が変わると混乱するのであろうか。