和算小説のたのしみ

過去に「算法少女」を読み、日本独自の発達を遂げていた和算という数学にちょっとだけ興味はあるのだ。未だに。数学自体は相変わらずちんぷんかんぷんだが。
ずいぶん前に買ってあったのだが、ようやく読了。

和算小説のたのしみ (岩波科学ライブラリー)

和算小説のたのしみ (岩波科学ライブラリー)

新田次郎に始まり、遠藤寛子井上ひさし宮部みゆきなど、20数冊が紹介されており、和算入門書の手引きといった趣でこれらの本すべてを読みたくなってしまった。これらをしっかり読み込むには一方でもう少し私自身の数学の素養を鍛えなくてはならないので、紹介された本すべてを読み終えるまでには向こう一年は軽くかかってしまいそうである。
中に紹介されていた金重明という作家の本、わが家にも一冊あった。「幻の大国主」という作品。「チャンギ」と呼ばれる韓国の将棋と日本の将棋を扱ったもの。学生時代に買って読んだ本の中の一冊。Amazonで探しても出てこなかったところをみると思った通り絶版なのだろう。自分自身よくもまあ名前を覚えていたものだと関心。

金重明(キム チュンミョン)
1956年、東京生まれ。大阪外国語大学朝鮮学科、東京大学教養課程ともに中退。1990年に『幻の大国手』(新幹社)によってデビュー。『ホルモン文化』に「五人の反乱」「はかなきこの世を過ぐすとて」「猿嘯」、『季刊青丘』に「算士伝奇」など短編を発表後、満を持して長編に底力を発揮、『戌辰算学戦記』『算学武芸帳』(いずれも朝日新聞社)を出す。後者は97年第八回朝日新人文学賞受賞。どの作品も専門知識の数学を活かした特異な題材であり、〈在日〉文学にまったくあらたな歴史小説の領域を開拓している。デビュー作『幻の大国手』も朝鮮のチャンギと日本の将棋というユニークな題材をとって、日帝時代の歴史と現代を結ぶ骨格の太い長編ミステリーに仕立てている。2000年発表の『皐(みぎわ)の民』(講談社)は、海上王・張保皐の伝説を小説化した気宇壮大な歴史海洋ロマン。金重明国民国家の虚構を撃とうとしている。ひたすら自由に海をめぐり国境も領土も無きをよしとする水平の思想を求め、東アジア共同空間を構想する。それが『皐の民』の小説戦略。〈在日〉文学に新機軸と博覧強記を備えた骨太のエンターテインメントが登場した。(貝)