父のおみやげ

両親が揃って加入している自主研究会の視察旅行があるらしく、父と母は少々浮き足立っている。結局バス出発時間にはちこくしたようだ。
帰ってきた母にてんまつを聞いたところ、行く先々で父は後れを取ったらしく、すべての個所でバスに乗り込むのは一番最後だったとのこと。病人、あるいはぼけ老人をともなって旅行に行こうっていうのだから仕方ない。今回一緒に行ったメンバーは40年来のお付き合いをしている旧知の皆さん方である。父のようすもすべて理解した上で参加を呼びかけてくださったのだ。父の奇行も織り込み済みなのだ。
父はどうやら私におみやげとして日本酒を買ってきたようだ。父本人のためもあって、丸2年以上わが家にアルコールはおいていない。かつてあんなに毎夜毎夜呑みまくっていたのに今は全く欲しくない。むしろありがた迷惑であるくらい。「せっかくだけど気持ちだけで」と伝えると、すこしだけ残念そうな顔をしたのがまた小憎たらしい。