妹の結納返し

結納返しの品々を持参して先方のお宅へ訪問。超略式で渡すものだけ渡し、先方のお母さんの手料理でもてなしを受けた。
と、ここまでは至極順調で滞りなかったのだが、ただではすまなかった。先方の案内でご近所の観光地巡りをしている真っ最中、事故は起きていた。あろうことか、父が粗相をしでかしてしまったのだ。高次脳に機能障害が残っている父は、表面的には失語症も徐々に回復基調にあるが、根底に脳みそそのものの損傷が残されていたのだ。もともと排せつ行動の制御不良もありはした。視界不良(だと思われること)や新たなモノゴトや出来事に急に直面したときの判断力、未知のものや既知のものに対しても一般的な常識による判断は難しいのだった。
特に今回は長時間に及ぶ移動や未知のメニューによる食事、トイレの場所すらおぼつかない未知のエリアに置かれてしまったことなど、粗相の確率を高める要因には事欠かなかった。今でこそ新聞を難しい顔で読んでいる格好をしているが、失語症者の識字能力は、言葉の消失とともに多くが失われてしまうという。父はもしかしたら見知らぬ場所ではトイレの標識やトイレの雰囲気などを察知して自力でたどり着くことが難しい状態になっているのではないだろうか。改めて、父は病気だったのだということを思い知らされるショートトリップとなった。
それでも先方のご夫妻は理解ある態度で接してくださったことに大きな感謝を抱き、妹はなんと良いご家族と巡り会ったことだという思いを強くしたのだった。