考えすぎて飛べないオトコの夢想

沢木耕太郎の『深夜特急』と『地球の歩き方』シリーズがバイブルだった」と言いたかった。深夜特急のほうは一便二便三便と関係図書を合わせて何度も何度も読んだし未だに思い出したように引っ張り出しては読み返している。一方の地球の歩き方シリーズである。大学入学を果たした私は、大学生協の書店にずらりと並んだ黄色い背表紙のシリーズを見て、当時すでに発行されていたかなりのタイトルを手にとっては、この夏休みにどこに行こうか、どうやったら行けるのか、などと想像したり話をしたり、地球の歩き方を手に実際に世界へと飛び出していった先輩同窓生後輩の話を聞いたりしていたものだ。彼らが世界の各地で繰り広げてきた武勇伝や失敗談を聞くにつけ、いつかは私自身も彼らに語って聞かせる日がやってくるに違いないと思っていたものだ。
結局私は一冊の歩き方シリーズを購入することなく卒業してしまい、一度も国外へと踏み出すことはしなかったのだ。あれだけの時間をもてあましていたにもかかわらず、である。
その後、卒業した年の12月、職場の社員旅行でソウルに連れていってもらい、そのまた翌年には(退社直前だっというのに)グアム島に連れて行ってもらったのだった。ありがたいことである。
もともと集団行動があまり得意でない傾向があり、学生時代からの漠然と個人旅行にあこがれてもいた私は、どちらのツアーでも知らぬ間にはぐれてしまい、皆に心配をかけつつちょっとした一人旅気分を満喫したのであった。肝心な部分のお膳だては結局当時の社長だったのだが。
一人じゃ飛び出す勇気はないんだよな。未だにいろいろ煮え切らないし。

「地球の歩き方」の歩き方

「地球の歩き方」の歩き方

未だに他人の書いたモノを読むばかりで自力で飛び出していくことはほとんど無いな。