ご近所

我が家の当主に代わり葬儀のお手伝い。精進落としで集落の世話組メンバー男女合計18人と膳を囲んだが、その中でアルコールをお召しになったのはわずかに4人。誰も彼もが「運転が…」とか「用事が…」とかなんとか言いつつ、せっかく故人が結び会わせてくださっている機会をないがしろにしてしまってる気がして仕方がない。かくいう私も呑みはしなかったのだが。
我らの集落では、当家が火葬場に出向いている最中に当主がいったん帰宅し、「まあ、おやりなさいよ」と集落世話組だけで精進落としをはじめてしまい、ご当家がお骨を抱いて帰宅すると同時にお骨を拝んで退散するのが通例なのだ。ご当家とともに精進落としで大宴会なんてことはないらしい。
そういえば我が家の葬儀後も、集落の方々はそそくさと退散なさっていたっけ。祖母の葬儀の際、本当は集落の皆さんと一緒に精進落としをして、盛大に呑んで騒いで欲しかったのだ。訳も知らずに引き留めてはみたが誰ひとり慰留に応じるはずもない。今思うとそれが我が集落のやり方だったのだ。仕方ないので親戚一同だけで精進落としをしたのだが、事情を知らぬ我が親族は明らかに拍子抜けしてしまった。祖母を失った空虚を精進落としで埋めてしまいたかった私は、想定外の寂しさを抱きつつ料理をつついていたことを思い出した。