父が大好きな

高次脳に機能障害を持つ父、完全にゴーイングマイウェイなお幸せな男である。
昔から小ざかしい男であったので、ちょいちょいとした知恵や工夫には目を見張るものがありはした。具体的にそれが何だったかなんて思い出せはしないが。
梅雨から夏に向かうころ、野生の王国のど真ん中にある我が家には周囲ですくすく育つ昆虫たちが大集合する。特に夜間、我が家以外には明かりを放つモノは何もないため辺り一面からムシムシ大行進状態。私は、ここに生まれ育ったからには仕方ないと諦めているのだが父はそうではない。しかも徹底抗戦したい質なのだ。ものすごい勢いでキンチョール(特定商品名)を振りまきまくるのだ。おかげで薬剤成分の油分(?)で畳や居間のちゃぶ台はつやつやつるつる、虫の死骸はそのまんま。とにかく虫どもを殺戮したくて仕方ない父は我らの食卓や食器の上でもお構いなしなのである。勘弁して欲しい。
父にそのことを告げるとまたしても逆ギレする始末。「お前のことは知らんが虫退治はいいことだ。ワシは平気だ」とのこと。父だけのルールで周囲のルールは無視である。全く聞く耳持てなくなった父は一時が万事この調子。他人、特に母と私の言うことは全く聞き分けられなくなった父、我らを下僕のように見下す毎日なのであった。
彼に対してどのように振る舞えばよいかわからず早5年、そりゃ我が胃袋に炎症もできる、家にも帰りたくなくなるってもんだよ。