父、週5日の単身赴任に出かける

失語症となった父は、5月半ばから週5日リハビリ病院への単身赴任を続けている。
金曜日の夜に母か私が迎えに行き、日曜日の夕方再び病院へと送り届けるというサイクルなのだが、たった2日とはいえ、我が儘な父に付き合って過ごすのは正直辛い。
父は、我が家に帰った2日間は傍若無人に振る舞う。少しでも気に入らないことがあればかんしゃくを起こす。
週5日もかけて言語療法士さんがリハビリをしてくれているのだが、我が家に帰るとそのトレーニングの成果が一切現れてこない。
言葉で伝えられないならば、別の手段で(たとえば手話とか、筆談とか、イラストを描くなどで)相手になんとか本意を伝えようとするのが、大抵の失語症患者の振る舞いだと思うのだが、我が父の場合は違う。
週5日のリハビリは、「なんとか我慢してやり過ごせれば、週末には我が家に帰れる。そのために辛抱しておきゃいいもの」くらいにしか思っていないのではないか。
明日、母とともにリハビリ病院にカンファレンスを受けに行く。父の現状と我が家の現状、これからの見込みなどを付き合わせ、すりあわせて、父と輪が家族にとってどのような対処をするのがもっとも効果的で経済的で楽しく無理なく過ごせるのか、相談するのだ。
個人的には、今の週5日の単身赴任を、許される範囲で永続していくのが望ましいと考える。
我が家にいるあいだの父は、おそらく「失語状態を改善しなければならない」とか、「もっとリハビリしてはなせるようにならなくちゃ」とは考えてくれていないようである。
だって、たった2日の帰宅日に、家族に対する配慮が全く伺えないのだ。自分自身がやりたい放題にしているだけで、非常に辛くてならない。喋りたいことを、自分自身のためだけに発声しているに過ぎない。伝わろうが伝わるまいがお構いなしなのだ。
そんな我が儘一杯の父から発せられる声から、なんとか真意をはかろうとする我ら家族なのだ。
結局、これまで週2日の帰宅中、父が話したいと思っている本意を全く理解できてはいない。母も、私も。