朝からやる気満々の父と

高次脳機能障害をわずらっている動く症例である父は、昨日も今日も見た目だけはいたって普通にいろんな物事をしようとして(は)いる。
今朝もコンバインの鍵をめぐる攻防戦から始まった。
先週、わが父勝手に自家用車運転事件が発生したこともあり、これまで以上に父が勝手に触らぬようにと、農業機械器具のキーを抜いて勝手に操作できないようにしている。今回も父の外泊に備えてわざわざ隠しておいた。
隠し場所は、マイカーの車内だったのだが、あろうことかこれを見つけてしまった父。
「コンバインはワシが使うからな(と言ったつもりだったのだろう)」と、さも当たり前のようにキーをぶら下げながら私の目の前でブラブラと振って見せるではないか。
・人の愛車*1を勝手にまさぐったこと
・以前の帰宅時から散々約束していたことをまったく反故にされてしまったこと
・「息子も根負けして鍵を渡してくれるんじゃないか」という浅はかな甘えが見て取れるようなにやけた表情
などにモーレツに腹が立った。
だいたい「車の運転はしないでね」「コンバインの操作はワシらがやるけんね」「トラクターが必要なことがあったら母か息子のワシに言ってちょ」と言い含めて納得するくらいなら、はなから隠す必要は無いのである。人と約束したことくらい、ぐっと我慢して守れるようなら隠したりしない。
「最低の信頼関係すら破られた」「ああ、やっぱり理解できてなかった」「通じてなかった」と思うととっても寂しい。嘘ついてまでコンバインのキーが欲しいのだ。
ぐっとこらえつつ、言っても理解してくれたかどうかわからないが説明を繰り返しているうち、父は目に涙をあふれさせ始めた。いくら言っても息子に伝わらない。息子が信用してくれない。そんなことを思って泣き始めたのか。しばし説得した後、父はようやく観念して、一度手にした諸々の鍵束を土間に投げ捨てた。
泣きたいのはこっちだよ。

*1:「愛車」と書くには書いたが、キーボードが滑ったのだ。現在乗っている車は、先に起こした自損事故以来あてがわれている台車のようなもので、まったく愛着などもってはいない。