調整会議の行方
祖母の容態は安定してはいる。脳梗塞(こうそく)の症状そのものは比較的範囲も狭い。しかし状態は決して芳しくないようだ。年が年だけに仕方がない。リハビリは継続しているものの劇的な回復を望むことはできないだろうとのこと。現状維持がいいところなのだろう。できることならば自宅に連れて帰りたいのが人情であるが、わが家の現実と祖母の状態を突き合わせて考えると、引き続いて医療機関か介護保険施設で他人に介護をゆだねざるを得ないという結論に達した。いいわけがましいが判断の要因を列記しておこう。
- コミュニケーションに関するもの
- いわゆる高次脳機能に障害が残っている。発語・発音ができない。
- もともとの耳が遠いことと相まって、発音できないばかりか周囲の言語を理解することもままならないのではないか。
- 従って、言語によるコミュニケーションが非常に困難
- 食事に関するもの
- 現在は、鼻から管を通し、流動食で栄養摂取中
- 自力で食事できるようになるために必要なのどの奥の反射がみられない
- →自力での食物摂取が相当困難
- →引き続いて流動食を継続
- 運動・作業などに関するもの
- 自分自身の力で座位を保っていることが困難。
- ベッド上で自律的に体勢を変えたりすることが困難
- 車いすやポータブル便座での座位を保てない
- 言語・嚥下・身体操作のリハビリを試みてはいるが回復の見通しは立たない
こうして祖母の容体に関することだけをあげてみても相当な障害がのこっていることがわかる。これまで、骨折リハビリ中の祖母は要介護2だったのだが、食事・排せつ・移動・意思疎通など、すべての面で介助を要する状態になってしまった。一気に要介護5の判定は確実となった。
要介護度がいくつであろうが関係ない。私自身が今の職を辞して介護できればよいのだが、私の気持ちが許しても親や世間がそれを許さない。
では、母に対して「仕事を辞めてばあちゃんの面倒見てくれ」とも言えない。わが家にはすでに一人大変面倒くさい症状を抱えた父がいるのだ。母を自宅にひきとどめると言うことは、きかん坊の父と四六時中一緒にいなさいというにひとしい。そんな子としたんじゃ母が参ってしまう。祖母にはわるいが、母を自宅に留めておくことは母の精神衛生上よろしくない。従って、祖母を施設に預けなくてはならないことが必然的に決まってしまうのであった。
本当は、失語症患いできかん坊の父をこそどこかの施設に預けてしまいたいのだが。