愛犬タロウが大変なことに

夕方、いつになく定時に仕事を切り上げ帰宅したら、愛犬タロウが大変なことになっていた。視覚、聴覚ともに機能しておらず、ただ立ち上がって鎖の範囲をぐるぐる回り続けるのみ。視覚が働いていないため、そこいら中のモノに鼻面からごつんごつんとあたっている。段差があってもお構いなしだ。抱きかかえて寝かせようとするが全く聞き分けてくれない。
そうした状態がしばらく続いた後、よろよろと倒れ込んだかと思うと舌をだらしなく垂らしてヒャンヒャンぜいぜいとあえぎだした。よだれも垂れっぱなし。ときおり前後の足を無駄に空中でばたばたと動かす。三半規管(イヌにもあるのか?)もうまく働いていないようだ。激しくけいれんしたり、悲鳴にしか聞こえない吠え声を上げてみたり、とにかくつらそう。
失語症の父も心配そうにしてはいるものの、おろおろするばかりで全く役立たず。水をくんできて手のひらで飲ませてやるとようやく落ち着いたので、寝床にしているブルーシートを敷き直してやり、様子を見ることに。
愛犬タロウは元来イノシシ猟をする紀州犬の遺伝子をもっており、体は結構でっかい。体長は80センチくらいだろうか。骨太だし、足腰の鍛え方もそこいらのイヌとは違うので、体力だけはある。この程度でくたばるような柔な体はしていない。考えられるのはタマネギ中毒か、イカタコのたぐいでおこる食あたりだろうか。
失語症で脳機能に障害を持っている父は、倒れてからこちら、異常にけちん坊になってしまい、いくら言って聞かせてもタマネギ入りのみそ汁やイカの煮汁や、緑黄色野菜しか入っていないような残飯を必ずイヌのえさに混ぜて与えているようなのだ。何度もタマネギはだめだと言って聞かせても全く聞き分けてくれない。タロウが倒れてしまったのもこうした食事の与え方に一因があるのだが、何度説明しても聞いちゃくれない。
母と相談して、これからしばらくはタマネギを使ったみそ汁は当面作らないこと。イカタコや野菜類の残飯の処理は父の目に触れないようにすることなどを確認し、夜の間にタロウが昇天してしまったりせぬように祈りつつ就寝。